内閣官房と国土交通省はこのほど、災害時における代替水源として井戸水などを活用する取り組みを促進させるため、「災害時地下水利用ガイドライン」を策定しました。災害時の断水に備え、あらかじめ災害時に活用できる井戸を「災害用井戸」などとして登録・認定する取り組みがあります。ガイドラインではこの登録制度の導入を推奨するもので、導入に向けた検討や導入後の運用などについて示されています。
能登半島地震では、断水が長期化し水源の確保が大きな課題となりました。断水は早期復旧困難地区を除いても、解消するまでに5か月近くかかりました。大規模災害発災時には、地下水の利用が有効な手段の一つとされ、実際に能登地方の一部被災地域では、住民の声かけなどによって井戸水や湧水が地域の住民に解放され、生活用水に利用されました。
一方、「井戸水等代替水源の活用」が地域防災計画に位置付けられていながら、実効的な取り組みが伴っていないケースもあるとされています。そうした自治体も含め、災害用井戸や湧水の活用に向けた取り組みを始めようとする自治体向けにガイドラインはとりまとめられました。
ガイドラインは全5章で構成されています。第1章でガイドラインの概要(背景、位置づけ、対象水源・用途など)を示し、第2~3章において災害用井戸・湧水の登録制度の導入に向けた検討を記載しています。続く第4章では、災害用井戸・湧水の登録に関する要件や手続きを説明し、第5章では導入後の利用にあたっての管理・衛生・情報発信といった留意事項をまとめています。
災害用井戸・湧水の登録制度とは、災害時に地域内の井戸や湧水を生活用水として活用できるよう、あらかじめ自治体が井戸の所有者の了承を得て井戸を登録・管理する仕組みです。ガイドラインでは、地域の共助の精神に基づき、災害時に井戸の水を無償で提供いただくことを原則とすると記されています。災害用井戸は地域によって、「災害時協力井戸」や「非常災害用井戸」などと呼ばれています。
井戸所有者に対して自治体が協力者を募り、現地確認や審査を行って認定・周知することにより、災害時にその井戸を活用することができます。登録された井戸は標識の掲示やホームページでの掲載などによって地域住民に周知されます。
ガイドラインでは、災害時に災害用井戸や湧水が活用できるよう、平時から「地下水マネジメント」が必要であり、平時においては点検・維持管理、災害時においては緊急点検、利用の可否などに関する情報発信といった対応が求められるとしました。
また、井戸の新設や改修の費用に充てられる補助金や助成制度についても紹介しています。