ビジネスと人権に関する課題トップ10「Top Ten Business and Human Rights Issues in 2026」を公表 IHRB
The Institute for Human Rights and Business(IHRB)は12月9日、「Top Ten Business and Human Rights Issues in 2026」を発表しました。
このレポートは、IHRBが毎年12月の国際人権デー(Human Rights Day)に発表しているものです。2026年に企業が取り組むべき「ビジネスと人権」に関する課題トップ10を以下のように示しました(※)。
- Overcoming corporate hushing and sustainability backlash(企業による沈黙とサステナビリティへの逆風の打破)
- Surmounting setbacks in sustainability legislation(サステナビリティ法規制をめぐる停滞の克服)
- Unlocking insurance to advance human rights(人権推進のための保険の活用)
- Protecting workers from AI exploitation and discrimination(AIによる搾取と差別からの労働者保護)
- Strengthening use of AI in due diligence and audits(デューデリジェンスと監査におけるAI活用の強化)
- Engaging new players in the defence sector(防衛分野における新規参入企業への働きかけ)
- Embedding rules to prevent war-crime complicity(戦争犯罪への加担を防ぐルールの定着)
- Understanding risks in asylum and immigration services(難民・移民サービスにおけるリスクの理解)
- Plugging labour shortages in the green jobs market(グリーンジョブ市場における労働力不足の解消)
- Confronting the human rights risks of the crypto industry(暗号資産業界の人権リスクへの対処)
これらトップ10の課題のうち、「企業による沈黙とサステナビリティへの逆風の打破」については、近年、多くの企業が気候変動や人権への取り組みについて、その内容を公表せずにあえて“沈黙”(自粛)する「グリーンハッシング」が広がっていると指摘しています。
企業がこのように“沈黙”を選択する背景には、公表した目標や活動がかえって政治的な攻撃の標的になったり、法的な責任を問われたりするリスクなどがあるとしています。この課題に対してIHRBは、人々の生活に実質的な変化をもたらす検証可能な事実を公表し、その行動がビジネス上の合理性があるという証拠を示すことで、“沈黙”を克服できると説明しています。
「AIによる搾取と差別からの労働者保護」に関しては、AIなどのテクノロジー製品の品質を支える、コンテンツモデレーションやデータラベリング業務に従事する人たちは、低賃金や不安定雇用、法的保護の乏しい状況で働いていることが多いため、搾取的な労働を余儀なくされていると指摘しました。
加えて、AIを活用した採用ツールが、採用システムに性別や人種、民族に基づく差別につながる偏見や不平等を根付かせる可能性があると言及しています。特に、非ネイティブスピーカーやキャリアを中断した人などを不利に扱うといった偏見の助長が懸念されています。そのため、企業は労働者のリスクを十分に特定した上で技術開発やシステムの導入を進めていくことが不可欠であるとの見解を示しました。
※邦訳はニュートン・コンサルティングによるものです。