EUオムニバス法案を追記、「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第2版)」を公表 ジェトロ
日本貿易振興機構(ジェトロ)は7月14日、最新版となる「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第2版)」を公表しました。2024年11月に公表した第1版をもとに、その後の法制化の進展(オムニバス法案)や最新動向を反映しました。オムニバス法案はサステナビリティ報告要件の簡素化が目的とされています。ジェトロでは欧州の人権関連の法令について参考和訳を作成、公開しており、それらについても一覧にして紹介しています。
「『サプライチェーンと人権』に関する法制化動向(全世界編 第2版)」で取り上げている国・地域は、EU▽英国▽フランス▽ドイツ▽オランダ▽イタリア▽スペイン▽ノルウェー▽スイス▽カナダ▽オランダ▽メキシコ▽オーストラリア――です。第1版と比較すると、特にEUやドイツの記載が拡充されました。
例えばEUの記載では、2025年2月にオムニバス法案が発表されたことが追記されています。欧州委員会は、EU域内産業の競争力強化とサステナビリティの両立に向け、企業の負担を軽減する考えです。オムニバス法案では、企業サステナビリティDD指令(CSDDD)や企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、炭素国境調整措置(CBAM)など持続可能性関連の4法令について、①適用延期②内容の簡素化を提案しています。
適用時期については、CSDDDの1年延期が決定したと記されています。2027年7月26日までに各EU加盟国にて国内法化され、2028年7月26日から企業規模に応じて段階的に適用が開始されます。
CSRDについても適用開始時期の2年間延期が決定したと記されています。2027年1月以降に開始する会計年度から段階的に適用が開始され、それぞれ翌年からその報告を行います。EU域外の対象企業に対しては、適用開始時期の変更はなく、2028年1月以降に開始する会計年度から適用されると記されています。
CSDDDに関しては直接取引先や間接取引先といった、DD実施の対象範囲や頻度、CSRDについては開示義務の内容、対象企業の基準などについて簡素化が提案されています。どちらも実務的負担の軽減が図られる内容ですが、今後の審議の動向を注視する必要があると記されています。
ドイツについては、管轄省庁によるガイダンス、FAQ▽苦情申し立て事例▽企業の対応事例▽今後の見通し――の記載が拡充されました。例えばドイツ連邦経済・輸出管理庁(BAFA)は2026年1月1日を期限にサプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)に基づく報告書の提出・公開状況を初めて確認する予定だと記されました。つまり2025年12月31日までに報告書を提出・公開していれば罰則は課されません。
米国についてはウイグル強制労働防止法(UFLPA)や「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」(米国・メキシコ・カナダ協定)などについて最新の動向が記載されています。2025年5月までにUFLPAに基づき37億ドル相当の1万6,000件の貨物の輸入が差し止めとなったことや、RRMを通じて2025年6月までに米国からメキシコ政府に対して計37件の申し立てがあったことなどが紹介されています。