「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)改定に向けて意見書を公表 経団連
日本経済団体連合会(経団連)は9月10日、「ビジネスと人権」に関する政府への意見書を公表しました。政府が年内に改定する行動計画に反映されることを狙いとしています。
経団連が公表した文書は、「『人権尊重経営』の推進-『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待-」です(PDF文書、全23ページ)。「ビジネスと人権」に関するこれまでの取り組みを総括した上で、次期行動計画に向けた政府への要望をまとめています。
国連人権理事会は2011年、「ビジネスと人権に関する指導原則」を全会一致で支持し、日本では2020年に政府が「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」(NAP:National Action Plan)を策定しました。この現行NAPは今年で期限を迎えるため、政府は年内に改定し次期NAPを策定します。
経団連では、次期NAPに盛り込んでほしい取り組みを以下の6つに整理しています。(1)人権DD支援の拡充(2)企業負担も考慮した情報公開の推進(3)救済へのアクセスの充実(4)多様なステークホルダーとの対話の推進(5)国際調和の推進(6)関係府省庁間の更なる連携強化。これらについて現状の課題を示した上で求められる具体的な取り組みを明記しています。
例えば「人権DD支援の拡充」では、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」の定期的な更新とともに、人権DDの一部である「追跡調査」について参考となる記述(ガイドライン)を新設するよう求めています。また、企業向けに無料で人権DDの相談ができる政府窓口を国内外に設置することを要望し、特に知見が蓄積されている日本貿易振興機構(ジェトロ)の活用を提案しています。
日本企業は「企業持続可能性報告指令(CSRD)」や「企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)」について対応すべく情報収集を進めています。「国際調和の推進」では、政府に対し政策対話を通じた欧州委員会への働きかけを求めました。具体的には、義務内容のEU域内調和▽国際基準との相互運用可能性の確保▽CSDDD適用開始の少なくとも2年前のガイドライン公表――などを求めています。欧州委員会は今年2月、CSRDおよびCSDDDについて「オムニバス法案」と呼ばれる改正法案を公表し、サステナビリティに関するDD実施や開示義務が簡素化される方向で調整が進んでいます。
意見書では「ビジネスと人権」の政策において府省庁間の連携が不足している点も指摘しました。「関係府省庁間の更なる連携強化」では、経済産業省・外務省が人権DDを、環境省が環境DDのガイドラインをそれぞれ策定している現状を示し、人権DDと環境DDを一体的に実施するための統合的ガイドラインを作成するよう要望しました。