「『ビジネスと人権』に関する行動計画(NAP)」改定版で意見公募、テーマ別課題にAIも 政府
外務省は今月30日まで「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP:National Action Plan on Business and Human Rights)の改定版について意見公募を受け付けています。改定版は2026年度からの新たな計画となり、日本が取り組むべき優先分野を明示しました。
「『ビジネスと人権』に関する行動計画(NAP)」改定版(以下、新計画)は、現行NAPの振り返りを行い、今後の方向性や関係府省庁による具体的な施策例を示しています。特に、従来は府省庁の政策領域ごとに点や線として実施してきた施策を、横断的に面として捉え直し、初めて優先分野として以下の8つを掲げました。
- (1)人権デュー・ディリジェンスおよびサプライチェーン
- (2)「誰一人取り残さない」ための施策推進
- (3)テーマ別人権課題
- (4)指導原則の履行推進に向けた能力構築のための仕組みづくり
- (5)企業の情報開示
- (6)公共調達・補助金事業等を含む公契約
- (7)救済へのアクセス
- (8)実施・モニタリング体制の整備
企業の人権尊重の取り組みが短期的には経済合理性に合わない場合を想定し、政府は補助金・税制優遇などの経済的支援に加え、企業間連携の促進、情報発信、監督指導の強化といった施策を拡充し、企業単独では対応が難しい問題を補完する考えです。「ビジネスと人権」において取り組みの第一歩である人権方針の策定については、企業規模による差が顕著であることが紹介されています。日本経済団体連合会(経団連)およびジェトロの調査結果によると、経団連会員の91%が人権方針を策定済みと回答した一方、ジェトロの調査では中小企業の策定率は32.5%にとどまりました。
「(3)テーマ別人権課題」では、「AI・テクノロジーと人権」と「環境と人権」の2つを掲げています。前者ではプライバシーの侵害や機密情報の流出、サイバー攻撃、誤情報の蔓延など多岐にわたる懸念が示されました。こうした状況下でAIイノベーション促進とリスク対応を両立させるため、「AI事業者ガイドライン」の周知・浸透を図るとともに、AI法などの法令整備、国際的協調の推進が明示されました。
後者の「環境と人権」では、両課題を統合的に扱う環境DDの推進が盛り込まれました。政府が新計画を策定するにあたって経団連は意見書を公表しており、経済産業省・外務省が人権DDを、環境省が環境DDのガイドラインをそれぞれ策定している現状を指摘、人権DDと環境DDを一体的に実施するための統合的ガイドラインの作成を要望していました。