TNFD提唱の「LEAP」に着手した企業は過半数越え、生物多様性への取り組みに関するアンケート調査結果を公表 経団連/経団連自然保護協議会
日本経済団体連合会(経団連)と経団連自然保護協議会は11月18日、年次調査である「企業の生物多様性への取組に関するアンケート調査」の2024年度結果を公表しました。生物多様性保全については、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が2022年に採択され、企業はGBFの目標達成に向けて生態系の回復や汚染防止などに取り組むことが求められています。
調査は2025年4月から6月にかけて実施、334社が回答しました(有効回答率21.2%)。
GBFでは2030年までに自然の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現を掲げています。公表された調査結果によると、GBFの掲げる23の行動目標のいずれかに関連する取り組みを行っている企業は、前年度から増加し約9割に達しました。具体的には、気候変動対策と生物多様性保全の両立を目指す「ターゲット8」や、ビジネス(企業)による生物多様性への影響評価と情報開示を求める「ターゲット15」への対応が進みました。
特に、情報開示のルールとして自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の枠組みを参照する企業が急増しました。その割合は前回調査から15ポイント増の72%となり、定着している国際NGO「CDP」の質問書への回答(73%)に肉薄する水準となりました。すでに定着しているCDPへの回答に加え、新たにTNFDのルールに基づいたリスク分析を行っている企業が増加したことがうかがえます。
TNFDが提唱する分析手法「LEAPアプローチ」の導入も加速しています。これは「Locate(場所の特定)」「Evaluate(依存・影響評価)」「Assess(リスク・社会評価)」「Prepare(準備・対応)」の4つのプロセスの頭文字を取ったもので、企業が自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づいて体系的に評価するプロセスとなっています。
今回の調査では、分析の第一歩である「Locate(場所の特定)」に着手した企業は全体の54%(前回調査比16ポイント増)、「Evaluate(依存・影響評価)」においても全体の52%(前回調査比16ポイント増)に達し、過去3年間の調査ではそれぞれ初めて過半数を超えました。「依存・影響評価」とは、事業が自然にどの程度依存し、どのような影響を与えているかを測定するフェーズであり、多くの企業が「場所の特定」の段階にとどまらず、具体的な数値や事実に基づいて自然への依存・影響を把握・評価する段階へとステップを進めていることがわかりました。
各プロセスの取り組み率はいずれも右肩上がりで急伸しており、「Assess(リスク・社会評価)」においても29%(前回調査)から44%へ、「Prepare(準備・対応)」においても25%(前回調査)から36%へと、10ポイント以上の増加となりました。