
台風の中心には雲が少なく風が弱い「台風の目」があり、台風の目を取り囲む雲の壁「アイウォール」の外側には、「インナーバンド(内側降雨帯)」と「アウターバンド(外側降雨帯)」という帯状の降雨帯があります。インナーバンドは激しい雨を連続的に降らせ、アウターバンドは断続的に激しい雨を降らせるほか、ときには竜巻を発生させることもあります。
台風が生まれる仕組みと消滅までの流れ
台風とは、熱帯や亜熱帯の海洋上で発生する熱帯低気圧のうち、北西太平洋または南シナ海に存在し、低気圧域内の最大風速がおよそ17 m/s(34ノット、風力8)以上のものを指します。台風の一生は、発生期・発達期・最盛期・衰弱期の4つの段階に分けられます。
台風は、気温が高い赤道付近の海上で多く生じます。海水が太陽の熱で蒸発して生じた水蒸気が集まり、反時計回りに渦を巻きながら上昇すると、上昇気流が発生します。上空の冷たい空気によって水蒸気が水滴、雲となることで多くの積乱雲が発生し、まとまって渦を形成します。この渦が発達して大きくなると熱帯低気圧となり、風速17 m/を超えたものが台風と呼ばれます。
このようにして発生した台風は、海面から上昇してくる水蒸気をエネルギー源にして発達する「発達期」を経て、中心気圧が最も下がり、最大風速が最も強い「最盛期」を迎えます。そして、海面水温が熱帯よりも低い日本付近に到達すると、海面からの水蒸気が減少し、台風から熱帯低気圧や温帯低気圧に変わっていく「衰弱期」を迎えます。
台風の構成:アイウォールとインナーバンド、アウターバンドとは
台風は、地上付近では上から見て反時計回りに強い風が吹き込む、巨大な空気の渦巻きです。台風の高さは10~15kmといわれますが、勢力によって異なります。
台風の中心には、雲が少なく風が弱い、直径約20~200kmの「台風の目」があります。台風が発達期にあり、中心付近の風が強まっている時ほど、台風の目は小さくはっきりと見える傾向があります。
台風の目を取り囲む背の高い雲の壁を、「アイウォール」といいます。アイウォールを形成するのは非常に活発な積乱雲であるため、この下は猛烈な暴風雨となります。アイウォールの外側には濃密な積乱雲が激しい雨を降らせる「インナーバンド(内側降雨帯)」が存在し、その外側、台風の中心から約200~600kmのところには、「アウターバンド(外側降雨帯)」があります。
台風の接近・通過に伴う雨の特徴
台風の接近や通過は、日本各地の天候に大きな影響を与えます。台風が日本付近にない場合でも、台風の周辺の水蒸気が日本付近に運ばれ、山の斜面などで上昇気流が発生し、雨が降ることがあります。このような雨を、「地形性降水」といいます。また、密度の異なる気団の境界である前線が日本付近に停滞している場合、台風の影響で前線の活動が活発になり、大雨になることもあります。
台風が接近してくる時、あるいは過ぎ去っていく時は、アウターバンドの影響により断続的な激しい雨が降り、時には竜巻が発生することもあります。強い風が吹くことにより、地形性降水も強まります。
台風の中心付近においては、アイウォールが猛烈な暴風雨をもたらし、そのすぐ外側のインナーバンドでも激しい雨が連続的に降ることになります。台風の中心付近では1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降る場合もあり、注意が必要です。