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能登の記録的大雨は地球温暖化が影響、イベント・アトリビューション手法による分析結果を公表 文科省/気象庁気象研究所

掲載:2024年12月20日

リスクマネジメント速報

         
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文部科学省と気象庁気象研究所は12月9日、石川県能登で9月21~22日に発生した大雨に、地球温暖化がどの程度影響していたのかを分析した結果を発表しました。地球温暖化がなかったと仮定した場合と比べ、大雨の総雨量が増加していたことから、この大雨に地球温暖化が関係している可能性が示唆されています。

この分析は、文部科学省が気候変動対策に役立つ科学的知見を得るために実施している「気候変動予測先端研究プログラム」と、気象庁気象研究所との協力で実施されました。

温暖化した気候状態と、温暖化しなかったと仮定した場合の気候状態を比較・分析する手法として、「イベント・アトリビューション(EA)」というものがあります。この手法を使うことで、極端な気象現象と、人為起源の地球温暖化との関係を定量化することができます。今回の分析では、EAの一種である「量的EA手法」(総降水量における温暖化の影響を評価する手法)を用いて実施されました。

具体的にはまず、石川県能登で年9月21日6~15時の積算雨量を、シミュレーションを使って忠実に再現。このシミュレーションと、地球温暖化がなかったと仮定した場合の同日時でのシミュレーションを比較しました。その結果、温暖化がなかったと仮定した場合に比べて、実際の総雨量が15%程度増加していることが明らかになりました。このことから、地球温暖化に伴う工業化後の気温上昇や、海面水温の上昇によって雨量が増加した可能性が示されています。

発表された資料では、この分析結果をもとに、9月21~22日の能登の大雨に起因する水災害(洪水など)にもEAの分析対象を広げて研究する予定であるということが記されています。また、今後は各都道府県単位の高温/大雨の発生確率や強さについても評価が行われます。さらに資料では、EAを迅速かつ簡易的に行えるシステムが開発段階にあることも書かれています。このシステムによって、地球温暖化以外の気候変動の影響度も評価できるようになることが期待されます。