【解説】災害とは?自然災害・人為災害の種類と特徴・企業の災害対策
| 執筆者: | ニュートン・コンサルティング 編集部 |
災害とは、自然現象や人為的な事故によって人命・財産・事業活動に重大な影響を及ぼす事象を指します。自然災害と人為災害の違い・分類を正しく理解することは、企業のBCPの実効性を高める上で不可欠です。本記事では、災害の定義・特徴・発生メカニズム・過去の事例を踏まえ、企業が検討すべき災害対策をわかりやすく解説します。
災害とは?定義とBCPとの関係
災害とは、自然現象や人為的な原因によって、人命や財産、社会・経済活動に重大な被害が生じる事象を指します。日本では、1961年に制定された災害対策基本法において、次のように定義されています。
- 自然災害:暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、地盤の液状化、噴火、地すべり、その他の異常な自然現象
- 人為災害:大規模な火事、爆発、その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害
図1:自然災害と人為災害の分類一覧
災害を表す言葉には、図1に示した自然災害と人為災害のほか、「複合災害」や「激甚災害」、「広域災害」と「局地災害」などがあります。これらは災害の種類そのものを大別した「自然災害」や「人為災害」とは異なるものであり、以下で詳しく解説します。
複合災害と激甚災害
複合災害とは、2つ以上の災害が同時期、または復旧の過程で連続的に発生する災害を指します。このような災害は、被害の長期化や影響範囲の拡大を招きやすく、企業活動にも深刻な影響を及ぼすおそれがあります。2011年に発生した東日本大震災は、Mw9.0の国内観測史上最大規模の海溝型地震が発生した後、巨大な津波が襲い、その津波による浸水被害のほか、福島の原子力発電所では機能喪失の事故や水素爆発が発生しました。これらは、「地震と津波」、「津波と爆発(原子力災害)」による複合災害であり、人的・物的に甚大な被害をもたらしました。
激甚災害とは、“国民経済に著しい影響を及ぼし、かつ、当該災害による地方財政の負担を緩和し、又は被災者に対する特別の助成を行なうことが特に必要と認められる災害が発生した場合”に、中央防災会議の意見を踏まえて、政令で指定される災害です。この指定は、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)」に基づき指定されます。なお、東日本大震災は、激甚災害として指定されています。
広域災害と局地災害
広域災害と局地災害は、災害を「被害範囲」で大別する場合に使用されます。
一般的に、自然災害の場合は、被害が広範囲にわたることが多く、上述のような地震や津波などにより複合災害へとつながった場合には、さらにその範囲が拡大します。そのため、自然災害は「広域災害」にあたります。
一方、人為災害は、事故や爆発などの被害範囲が限定的・局所的であることが多いことから、「局地災害」にあたります。ただし、原子力事故の放射性物質による大気汚染被害などは、広域災害となり得るものもあります。
これらの被害範囲に定義はなく、一般的に被害範囲で大別する場合に使用される名称であることに留意します。「災害」という言葉一つとっても、その意味や使われ方に明確な違いがあるため、正確に理解した上で正しく使用することが重要です。
BCPの実効性を高めるためには
東日本大震災のような巨大地震に起因する災害は、発生確率の不確実性が高い一方で、発災後の被害が甚大となる傾向にあります。発災後の被害を最小限に抑えるためにも「災害は常に起こり得るもの」と想定した上で、企業は「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を策定し、常に改善し続けることが求められます。
内閣府では、企業のBCPの策定や運用促進における経営者の責任について、以下のように述べています。
- 事業継続に取り組まないことは、製品やサービスを供給する責任の放棄となることを認識すべきである
- 事業継続に取り組むことは、企業価値の向上につながった事例があるため、前向きな取り組みであると認識してほしい
- 事業継続の取り組み状況を、従業員やサプライヤーにわかりやすく示してほしい
- BCP策定は最初から完璧なものを求めず、地道にできることから取り組んでほしい
- BCPを策定することがゴールではなく、中身の充実化を検討してほしい
これらのメッセージは、経営責任者だけでなく、事務局や従業員にも浸透させることが、BCPの実効性を高めるためには不可欠です。それを踏まえ、災害の種類や特徴をもとに、リスクアセスメント(リスク特定・リスク分析・リスク評価)を体系的に整理し、BCPの改善や訓練の一助とすることが肝要です。
自然災害の種類一覧と特徴
自然災害は、表1に示した自然現象により、人命や財産、社会・経済活動に甚大な被害をもたらす災害を指します。これらの自然現象の発生可能性を高い精度で予測することは困難です。加えて、発生メカニズムや特徴・被害パターンも異なります。そのため、各自然現象の種類・発生条件・特徴を正しく理解し、自社に影響を及ぼす可能性のある災害に備えることが不可欠です。
【表1】自然災害の分類と主な自然現象の一覧
| 自然災害の分類 | 主な自然現象 |
|---|---|
| 地震災害 | 地震・地盤の液状化 |
| 津波災害 | 津波 |
| 風水害 | 暴風・竜巻・豪雨・洪水・高潮 ※浸水・塩風・波浪・融雪など |
| 土砂災害 | 崖崩れ・土石流・地すべり |
| 火山災害 | 噴火 ※噴火に伴う火山現象(噴石・溶岩流・火山灰(降灰)・火砕流・火山泥流・融雪型火山泥流など) |
| 雪害 | 豪雪 ※暴風雪・なだれ害・着雪害・落雪害など |
| その他 | ひょう害・雷害・干害・乾燥害・冷害・凍害・霜害・寒害など |
中央防災会議「防災基本計画(令和7年7月)」、気象庁「気象災害に関する用語」を基にニュートン・コンサルティングが作成
地震
地震とは、プレートの跳ね上がりや断層がずれることによって揺れが発生する現象です。地震は、「海溝型地震」と「活断層型地震」に分類されます。
海溝型地震は、プレート境界の海溝やトラフで発生する地震です。陸側のプレートの下に海側のプレートが沈み込む際に「ひずみ」が蓄積し、限界に達したときに陸側のプレートが跳ね上がります。これにより揺れが発生し、マグニチュードが大きい場合や、震源が浅い場合には津波を誘発する可能性があります。さらに、プレート境界付近では、跳ね上がる場合に発生する地震だけではなく、海側のプレート内部の断層がずれたり破壊されることで地震が発生する場合もあります。
活断層型地震は、陸側のプレート内の断層で発生し、「直下型地震」や「内陸型地震」とも呼称されます。地球はプレートで覆われており、日本には約2,000の活断層があります。このプレート同士がぶつかる際に発生するエネルギーが断層へ及んだ場合に、地盤がずれたり破壊される断層活動が起き、その衝撃が地表に伝わることで揺れが生じます。活断層型地震の場合は、津波を誘発する危険性が比較的小さいものの、震源が浅い場合には、緊急地震速報が通知される前に突然大きな揺れに見舞われ、甚大な被害が生じることが懸念されます。
【表2】過去日本で発生した海溝型地震と活断層型地震の主な名称とマグニチュード
| 海溝型地震 | 活断層型地震 |
|---|---|
| 1946年 南海地震(M8.0) | 1995年 兵庫県南部地震(M7.3) |
| 2003年 十勝沖地震(M8.0) | 2004年 新潟県中越地震(M6.8) |
| 2011年 東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)(※a) | 2008年 岩手・宮城内陸地震(M7.2) |
| 2025年 青森県東方沖地震(仮称)(M7.5) | 2016年 熊本地震(M7.3) |
(※a)気象庁表記により、モーメントマグニチュード(Mw)で記載
気象庁「過去の地震津波災害(~1995年)」、「日本付近で発生した主な被害地震(1996年~)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
このような地震によりもたらされる災害に、「地盤の液状化(液状化現象)」があります。
液状化現象とは、地表の下にある地下水を含んだ地盤が、地震の揺れにより砂地と混ざることで一時的に液状化する現象です。表2の兵庫県南部地震・新潟県中越地震・東北地方太平洋沖地震では、地震により液状化現象が発生し、地盤の沈降による建物の傾斜や、マンホールなどの浮き上がり、路面変状などの被害が確認されました。
液状化現象が起こりやすい土地は、「地下水位が高く、ゆるい砂地」という特徴があります。このような土地や地形は、表3の通りで、過去に洪水や土砂災害が発生してできた土地や、水部を陸地化した土地であることがわかります。
【表3】液状化現象が起こりやすい主な土地・地形
| 土地・地形の分類 | 説明 |
|---|---|
| 後背湿地 | 地下水位が地表近くにある粘土や泥炭土の軟弱な地盤 |
| 三角州 | 過去に海中にあった地表が海退により陸化した土地 |
| 扇状地 | 山間の狭い谷から、土砂や砂礫が堆積して平地にかけて扇状に広がった土地 |
| 盛土地・埋立地 | 山地や低地、河川・湖・沼・海・池などの水部やくぼ地に、周辺の地表の高さと同等、もしくはそれよりも高く土砂で埋め立てた土地 |
| 干拓地 | 海・湖・沼などを堤防などで仕切り、水を抜いた土地 |
国土交通省「治水地形分類図の内容」を基にニュートン・コンサルティングが作成
津波
津波とは、地震などにより海底が隆起・沈降することで、海面の変動が波となって周囲に伝播する現象を指します。主に海溝型地震によって発生しますが、火山・海底火山の噴火、地すべりといった自然現象が一因となり、津波が発生する場合もあります。
「津波の速さ(伝播速度)」と「津波の高さ」は、隆起や沈降が発生した海底の水深により大きく異なります。水深が5,000mと深い場合の伝播速度は時速800km程度で、沖合ではジェット機並みの速さで伝わります。一方、水深が10m程度の場合、伝播速度は時速36km程度となりますが、津波の高さは増幅し、沿岸部には波が次々と押し寄せます。
東日本大震災では、死者数が1万5千人を超え、そのうち9割が津波による被害となりました。(※1)この教訓を踏まえ、巨大地震が発生した場合の「大津波警報・津波警報」に関して、予想される津波の高さに「巨大」、「高い」という言葉を用いて第一報を発表し、迅速で効果的な避難を促す運用に変更しています。
(※1)警察庁「第1節 被害状況及び警察の体制」
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風水害(暴風・竜巻・豪雨・洪水・高潮)
風水害とは、暴風・竜巻・豪雨・洪水・高潮など、雨と風に起因して発生する災害の総称です。類似した言葉に「水害」や「風害」がありますが、以下の点が異なります。
水害とは、大雨・強雨・融雪水により発生する災害の総称で、風による災害や、風が発生させる「高潮・波浪」による災害は含まれません。一方、風害とは、強風や竜巻により発生する災害の総称です。こちらは、「風」に起因する災害のため、高潮や波浪が含まれますが、雨や融雪水による災害は含まれません。
風水害に含まれる主な自然現象は以下の表4の通りです。
【表4】風水害に含まれる主な自然現象(災害)
| 風水害の現象 | 特徴 |
|---|---|
| 暴風 | 平均風速がおおむね20m/sを超える風(※基準値は地方により異なる) |
| 竜巻 | 積乱雲などに伴い発生する激しい渦巻き |
| 豪雨 | 激甚災害が発生した顕著な大雨・命名されるほどの大雨災害 |
| 洪水(外水氾濫) | 河川の流量や水位が増大し、河川から水が市街地に溢れる現象 |
| 高潮 | 台風や強い低気圧により波が高くなり、海面水位が異常に上昇する現象 |
| 浸水(内水氾濫) | 施設や住宅などの建物や車両の内部に水が入り込む現象 |
| 塩風 | 強風により海上から塩分粒子が運ばれ、作物や送電線などに被害が生じる現象 |
| 波浪 | 風の力で海面付近の海水だけが動く現象 |
| 融雪 | 積雪が気温の上昇や大雨により急激に溶ける現象 |
気象庁「予報用語」を基にニュートン・コンサルティングが作成
風水害になり得る雨には、記録的短時間大雨情報が発表されるほどの猛烈な雨や、線状降水帯による大雨も含まれます。
近年、1時間あたりの雨量(時間雨量)が50mmを上回る短時間降雨の発生件数が増加傾向にあります。時間雨量50mm以上とは「非常に激しい雨」と表現され、傘が役に立たず、水しぶきで視界不良が発生し、車の運転が危険となる雨の降り方を指します。2015年から2024年、1976年から1985年までの各10年間における時間雨量50mm以上の年間発生件数を比較すると、10年間の平均件数は約1.5倍となり、増加傾向となっています。(※2)
従来、風水害は「台風」に起因して発生する災害と捉えられていました。しかし、以下の図2に示した通り、台風の上陸数は過去10年間の平均で年間3.3回となり、直近の過去5年間においては、それ以前の過去5年よりも減少傾向にあることがわかります。
図2:2015年~2024年における台風の上陸数と1時間降水量50mm~100mm以上の発生件数の比較と傾向
一方、1時間降水量50mm~100mm以上の発生件数は、台風の上陸数にかかわらず、増加傾向にあることが図2から読み取ることができます。このことから、台風だけが大雨をもたらすのではなく、ほかの要素が一因となっていることが伺えます。
これは地形構造と気候変動によるものが大きいと考えられています。日本は世界有数の多雨地帯の東端に位置しているため、世界の年降水量が約1,171mmであるのに対し、日本は約1,668mmとなっています。(※3)さらに、都市部では、「ヒートアイランド現象」が一因となり局地的な大雨をもたらします。都市部の地表はアスファルトやコンクリートで覆われており、雨水が地下に浸透しにくいという特徴があります。その結果、排水施設の処理能力を大幅に超える短時間降雨により、内水氾濫を引き起こします。これにより、地下鉄や地下駐車場、アンダーパスといった場所が浸水害に見舞われるほか、下水道管内の空気圧の高まりによりマンホールが吹き飛ぶ「エアハンマー現象」が発生する可能性があります。
上述の地形構造に加え、IPCCの第6次評価報告書によると、気候変動の面で「人間の影響が大気・海洋・陸域を温暖化に導き、大雨の強度が増すとともに、さらに頻発化する可能性が非常に高い(※4)」と指摘されています。
このように、風水害は必ずしも台風によって引き起こされるものではなく、様々な気象・地形・気候変動などの要因が複雑に絡み合い、リスクが高まっていることに留意する必要があります。そのためにも、平時からの備えを講じ、災害時に迅速かつ適切な対応がとれる体制を構築することが重要です。
(※2)国土交通省「水害レポート2024」
(※3)国交省「令和5年版 日本の水資源の現況について」
(※4)環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル(2023年)」
土砂災害(崖崩れ・土石流・地すべり)
土砂災害とは、大量の土砂が建物や田畑などに流れ込み、壊滅的な被害をもたらす危険性が高い災害の総称です。土砂災害に含まれる自然現象には、崖崩れ・土石流・地すべりがあります。これらは、主に降雨や融雪水により発生するため、風水害と密接な関係にあります。
【表5】土砂災害の主な種類と特徴
| 土砂災害の種類 | 説明 | 特徴 |
|---|---|---|
| 崖崩れ | 雨が地中にしみ込んだ結果、地盤が軟弱になり急激に斜面が崩れ落ちる現象 | 突然発生し、崩れ落ちるまでの時間が極めて短い |
| 土石流 | 降雨により山腹・谷底・渓流にある土砂や河川の水などと混じり、一気に下流まで押し流される現象 | 時速20kmから40kmほどの速度で、一瞬のうちに建物などを破壊する |
| 地すべり | 地下水の影響などにより、斜面の一部、または全てが斜面の下に滑り落ちる現象 | 崖崩れや土石流と異なり、広範囲にわたり大量の土砂が動くため、建物や田畑とともに滑り落ち、甚大な被害となる |
e-GOV「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
表5に示した土砂災害は、発生までの時間が短いことや、発生後の被害が人命に直結することから、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」に基づき、「土砂災害警戒区域」と「土砂災害特別警戒区域」を各都道府県が指定します。さらに、「大雨警報(土砂災害)」が発表されている状況で、土砂災害の発生危険度が極めて高い場合は、気象庁より「土砂災害警戒情報」が発表される仕組みとなっています。
このように、土砂災害は主に降雨と密接な関係がありますが、発生要因はそれだけに限りません。大雨だけにとどまらず、地震が一因になる場合があります。図3は2015年から2024年までの土砂災害発生件数を、崖崩れ・土石流・地すべり別に示したグラフです。
図3:2015年~2024年における土砂災害の発生件数と発生現象の内訳
突出して件数の多い2018年は、平成30年7月豪雨(2,581件)に加え、北海道胆振東部地震(227件)が影響しています。(※5)さらに2024年に発生した能登半島地震では、北陸3県で456件の土砂災害が発生しました。死者・行方不明者は39名、家屋の全壊・半壊件数は148件に上ります。石川県での発生は424件となり、地震による土砂災害で、単一県で発生した件数として歴代1位となりました。(※6)
このように、土砂災害は降雨や融雪などの風水害と密接な関係があるとともに、地震の影響により発生し得る複合災害でもあります。近年の大雨の傾向や日本における地震の発生頻度を踏まえ、自社周辺の地形や過去の災害履歴などを把握し、事前に土砂災害のリスクに備えることが重要です。
(※5)国土交通省「平成30年 全国の土砂災害発生状況」
(※6)国土交通省「令和6年の土砂災害」
火山災害(噴火)
火山災害とは、火山活動や噴火によって引き起こされる火山現象が要因となる災害を指します。主な火山現象には、噴石・火砕流・融雪型火山泥流・溶岩流・火山灰などがあり、特徴や影響範囲が大きく異なります。
【表6】火山災害の原因となる主な火山現象の種類・特徴・被害
| 火山現象 | 特徴 | 影響・被害 |
|---|---|---|
| 大きな噴石 | 火山噴火により吹き飛ばされる岩の塊が約20~30cm以上のもの 火口周辺2~4kmに被害が生じる。風の影響をほとんど受けず、弾道を描いて飛ぶ |
避難までの時間的余裕はほとんどなく、生命への危険性が高い |
| 火砕流 | 高温の火山灰や岩石が空気や水蒸気と一体となって山の斜面を流れ下る現象 流れるスピードは時速数十km~数百kmとなり、温度は数百度に達する |
火砕流の通過した場所は焼失する |
| 融雪型火山泥流 | 積雪した火山で噴火が発生し、噴火による熱で雪が融かされ大量の水となり、火山噴出物を巻き込んで流れ落ちる現象 流れるスピードは時速数十kmに及ぶ |
谷筋などを通り、遠方まで流れる可能性がある |
| 溶岩流 | 溶岩(マグマ)が火口から吹き出して地表を流れ下る現象 流れの速度は比較的遅く、場合によっては歩いて避難することが可能 |
溶岩流は高温なため、草木・建物・道路などを焼き尽くす可能性が高い |
| 火山灰(降灰) | 火山噴火により火口から噴出する直径2mm未満の小さな固形物 火口から十数km~数百km以上の広範囲にわたり、風の影響を受けて降り積もる場合がある |
農作物・道路・航空などの日常生活に影響を与える |
| 火山ガス | 火山活動によって地表に噴出するガス 二酸化炭素・硫化水素・二酸化硫黄などを含む |
吸引すると気管支障害や硫化水素中毒となり、人体に影響を及ぼす |
| 火山泥流 | 火山噴火によって噴出した火山灰や岩石に、大量の水が混ざり地表へ流れる現象 流れるスピードは時速数十kmに達する場合がある |
麓の家屋を流すおそれがあり、大きな被害が発生する |
気象庁「火山災害の種類」を基にニュートン・コンサルティングが作成
表6のうち、「大きな噴石」、「火砕流」、「融雪型火山泥流」などは、発生から短時間で火口周辺や居住地域に影響を及ぼすおそれがある、特に危険性が高い火山現象です。これらが発生、あるいは拡大すると予想される場合は、気象庁が「噴火警報」を発表します。噴火警報は、警戒が必要な範囲を「火口周辺」、「居住地域」と明示して発表されます。
さらに、全国111の活火山のうち、49の火山では「噴火警戒レベル」が導入されており、火山活動の状況に応じて、「警戒が必要な範囲」と「とるべき防災対応」を以下の5段階で示します。
- 噴火警戒レベル5(避難):噴火警報(居住地域)
- 噴火警戒レベル4(高齢者等避難):噴火警報(居住地域)
- 噴火警戒レベル3(入山規制):噴火警報(火口周辺)
- 噴火警戒レベル2(火口周辺規制):噴火警報(火口周辺)
- 噴火警戒レベル1(活火山であることに留意):噴火予報
※気象庁「噴火警戒レベルの説明」
噴火警報や噴火警戒レベルは、火山現象の発生や拡大が予想される場合に発表される情報であり、「火山現象に対する具体的なリスクを把握する」情報ではないことに留意します。また、火山災害は、各火山ごとに想定される火山現象や影響範囲が異なるといった特徴があることを踏まえ、対策を講じる必要があります。
そのため、気象庁は警戒レベルに応じて、各火山ごとの特徴や想定される火山現象、影響範囲、過去の事例などを整理したリーフレットを公表しています。(※7)各都道府県では、火山現象ごとの影響範囲を示した「火山ハザードマップ」を整備し、具体的な防災対策を検討するための資料として公開しています。
企業はこれらを活用し、自社やサプライヤーの拠点周辺に活火山が存在するかを確認するとともに、火山が近くにない場合でも影響範囲の予想圏内に入るかどうかも併せて確認することが重要です。その上で、火山現象の特徴・影響を考慮し、具体的な防災対策に落とし込むことが不可欠です。
(※7)気象庁「各火山のリーフレット」
雪害(豪雪)
雪害とは、大雪や豪雪によって引き起こされる災害の総称です。雪害は「積雪」と「降雪」に起因する、なだれ・着雪・落雪・暴風雪といった自然現象により発生します。日本では、主に12月から2月にかけて雪害のリスクが高まり、人的被害や交通・物流の停滞・ライフラインの寸断などに重大な影響を及ぼす可能性がある災害です。
表7は、雪害になり得る自然現象の特徴や被害事例を表したものです。
【表7】雪害につながる主な自然現象の種類・特徴・被害
| 雪害につながる現象 | 説明・特徴 | 影響・被害 |
|---|---|---|
| なだれ | 斜面の上にある雪や氷の一部、あるいはすべてが肉眼で識別できる速度で流れ落ちる現象
|
|
| 着雪 | 降雪が電線や樹木などに付着する現象 |
|
| 落雪 | 建物などに降り積もった多量の雪が落下する現象 | 除雪中に屋根から大量の雪が落下し、下敷きになる |
| 暴風雪 | 暴風を伴った降雪、または積雪が暴風によって舞い上がる現象 |
|
気象庁「予報用語」、「平成18年豪雪 平成17年(2005年)12月~平成18年(2006年)3月」を基にニュートン・コンサルティングが作成
表7にある自然現象のうち、特に「落雪」による被害が甚大であったのは「平成18年豪雪」です。この災害は、2005年12月上旬から2006年1月初頭にかけて、豪雪地帯である新潟県・北陸地方を中心に記録的な積雪となり、除雪作業中の落雪事故などにより死者数は152人に上ったほか、以下の被害が生じました。
- <平成18年豪雪の主な被害>
-
- 死者・負傷者数:2,297人(うち、死者数152人)
- 住家の全壊・半壊・一部損壊:4,713棟
- 停電:約138万戸(新潟県下越地方を中心に)
- 水道の断水:61,091戸
※内閣府「平成18年豪雪による被害状況等について(第9報)」
雪害は上述のような豪雪地帯で多く発生する災害ですが、普段雪の少ない関東地方にも被害が生じた事例があります。2018年1月22日から23日にかけて発生した暴風雪・大雪災害では、低気圧が発達しながら関東地方や東北太平洋側の平野部にわたり、1都9県で大雪警報が発表された事例です。この災害では、以下のような被害が発生しました。
- <平成30年強い冬型の気圧配置による大雪の主な被害>
-
- 高速道路、直轄国道などの通行止め
- 鉄道、高速・路線バスの運転休止
- フェリー、汽船などの運休・一部運休
- 航空機などの欠航
※国土交通省「1月22日からの大雪等に係る被害状況等について【第9報】」
この災害による人的被害はほとんどなかったものの、数日間にわたり交通インフラへの影響が生じました。大雪による交通障害は、陸海空のあらゆる交通機関に影響し、復旧までに時間を要するため、物流などに大きな影響を与えます。そのため、気象庁は5日先までに警報級の大雪が予想される場合、以下の図4に示す気象情報を段階的に発表します。
図4:大雪のおそれに応じて段階的に発表される気象情報と対応
図4のうち、「早期注意情報(警報級の可能性)」は、警報級の大雪や暴風雪が5日先までに発生する見込みがある場合に発表される情報です。事前に雪害の発生を把握することが可能なため、企業は従業員の出社体制の調整やハード面の事前対策に対し、十分な時間的余裕を持つことが可能となります。
人為災害の種類一覧と特徴
人為災害とは、大規模な火事や爆発など、主に人為的な要因によって発生し、人命や財産、社会・経済活動に重大な被害を及ぼす災害を指します。さらに、「その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」として、交通・インフラ産業による事故や特殊災害も含まれます。
【表8】人為災害の分類と主な災害名の一覧
| 人為災害の分類 | 主な災害名 |
|---|---|
| 大規模な火事による火災 | 大規模な火事・林野火災 |
| 爆発 | 大規模爆発 |
| 交通・インフラ産業による事故 | 海上災害・原子力事故 ※航空災害・鉄道災害・道路災害など |
| 特殊災害 | NBC災害・CBRNE災害 |
中央防災会議「防災基本計画(令和7年7月)」、e-GOV「災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
大規模な火事による火災
大規模な火事による火災とは、物体の燃焼(火事)により、人命や財産に甚大な被害が及ぶほどの社会的影響が大きい火災を指します。このような火災は、発生場所や燃焼対象によって、主に「火事災害」と「林野火災」に大別されます。
火事災害とは、主に都市部や建築物などで発生する火災です。木造住宅密集地域での延焼火災や、高層建築物・地下街・駅などの不特定多数の人が利用する施設での火災を指します。
林野火災とは、森林・原野・牧野が焼損した火災を指します。不用意な火の取り扱いなど、人為的な原因により出火することが多く、地形や気象条件によって急激に延焼が拡大するおそれがあります。
これらの火事・火災について、どの程度が「大規模」に該当するかは明確ではありません。消防庁では、これに相当する表現を「大火」としており、「建物の焼損面積が3万3,000㎡(1万坪)以上の火災」と定義しています。過去の火災報告や発災事例から読み取ると、「大規模火災」という表現は、「大火」に該当する焼失面積には及ばないものの、災害救助法が適用されるほどの被害が生じた火災、もしくは大火と同程度の火災として整理されていることが、表9から読み取れます。
【表9】日本国内における近年の主な大規模火災一覧
| 大規模火災・大火名称 | 焼失面積 | 補足 |
|---|---|---|
| 2018年:新潟県糸魚川における大規模火災 | 約4万㎡ | 大火の定義以上の焼失面積、災害救助法適用 |
| 2021年:令和3年栃木県足利市における大規模火災 | 約167万㎡ | 災害救助法適用 |
| 2025年:令和7年岩手県大船渡市における大規模火災 | 約3,370万㎡ | 大火の定義以上の焼失面積、災害救助法適用 |
| 2025年:大分市佐賀関の大規模火災 | 約4万8,900㎡ | 大火の定義以上の焼失面積、災害救助法適用 |
内閣府「≪参考資料≫災害救助法適用実績(平成7年度~令和6年度)」、総務省消防庁「令和6年版 消防白書 資料編」を基にニュートン・コンサルティングが作成
これらの火災は、気象条件が延焼や被害拡大に大きく影響するケースもあれば、気象要因以外の事故や人為的要因が主な契機となる場合もあります。
気象条件が被害拡大に強く関与した一例として、2025年2月19日および26日に岩手県大船渡市で発生した大規模な林野火災が挙げられます。この火災は、完全鎮火までに約1カ月半を要し、焼損棟数は226棟に及びました。この要因の一つとして、2月の降水量が観測史上最も少なかったことにより、延焼が広がりやすい状況であったことや、発災初期に強風が吹いていたことによって、激しい燃焼と飛び火が発生したことが挙げられます。(※8)
これを受け、気象庁は、2026年より記録的な少雨の場合に「少雨に関する気象情報」を発表し、火の取り扱いに対する注意喚起を毎年1月から5月までの期間を対象に実施する旨を公表しました。さらに、同期間においては、少雨の地域に全国的な広がりがある場合に、消防庁・林野庁とともに臨時の記者会見を開催し、気象状況などの解説も併せて行います。(※9)
(※8)総務省消防庁「令和6年版 消防白書 資料編」
(※9)気象庁「林野火災予防のための新たな取組を開始します」
一方で、気象条件との直接的な関連性が低い場合でも、船舶や車両、航空機などの事故により複合的に発生する火災もあります。たとえば、船舶の衝突事故によりオイル漏れが発生し、火災につながるケースです。消防庁はそれぞれの火災について以下の通り定義しています。
- 船舶火災:“船舶またはその積載物が焼損した火災”
- 車両火災:“自動車車両・鉄道車両・被けん引車、またはこれらの積載物が焼損した火災”
- 航空機火災:“航空機またはその積載物が焼損した火災”
※総務省消防庁「令和6年版 消防白書 資料編」
さらに、企業においては、特定事業所に該当する石油コンビナートなどで火災が発生した場合、従業員の生命に危険を及ぼすだけでなく、事業活動に深刻な影響を与える可能性があります。
2014年1月9日に四日市臨海地区で発生したプラント爆発火災では、熱交換器の解放洗浄作業時に爆発火災が発生し、死者5人、負傷者13人の人的被害が生じました。(※10)同年9月には、名古屋港臨海地区において、コークス炉の石炭貯蔵設備で爆発火災が発生し、15人が負傷しました。この火災では、石炭の特性に対する理解が不十分であったことや、温度・一酸化炭素濃度が上昇した後の対応に不備があったことが直接の要因とされています。(※11)
(※10)三菱マテリアル株式会社「四日市工場爆発火災事故に関する 事故調査委員会最終報告について」
(※11)総務省消防庁「新日鐵住金(株)名古屋製鐵所爆発火災」
このように、大規模な火事による火災の要因は、気象条件が被害拡大に影響するものと、事故や爆発などの人為的な要因で発生するものに大別できます。特に後者については、情報共有体制の強化や実効性のある安全対策を徹底し、現場対応力の向上につなげることで未然に防げる可能性があります。そのため、マニュアルや作業手順が形骸化していないかを定期的に見直し、人材育成や技術伝承を通じて、現場で機能する体制を継続的に構築することが不可欠です。
爆発
爆発とは、燃焼・気体の解放・液体の気化などにより、爆鳴を伴って発生する現象を指します。爆発は、設備の破壊にとどまらず、広範囲に及ぶ人的被害をもたらすほか、二次災害につながる危険性があります。
過去、日本では大規模な産業施設や、石油コンビナートなどで爆発が発生しています。2011年に発生した東日本大震災では、液化石油ガスの貯槽設備で大規模な爆発事故が発生し、17基のLPGタンクすべてが損傷したほか、爆風により近隣住宅の窓ガラスが破損し、約85,000人の住民に避難勧告が出されました。また、同年11月には、山口県の塩化ビニルモノマー製造施設で、プラント停止中に鉄錆による異常反応が発生し、爆発に至った事例があります。(※12)
(※12)総務省消防庁「自衛防災組織等の防災活動の手引き(令和6年8月一部改訂)」
このような爆発は、化学的・物理的要因のほか、操作・管理上の要因、外的要因などに起因します。表10は、総務省消防庁「自衛防災組織等の防災活動の手引き(令和6年8月一部改訂)」を基に、それらの要因をカテゴリ化して示した一覧です。
【表10】爆発の主な発生要因の一覧
| カテゴリ | 具体的な原因・現象 | 説明 |
|---|---|---|
| 化学的要因 | 異常な重合・分解反応の進行 | 冷却不足・攪拌(かくはん)の停止などにより、物質が重合・分解を引き起こし、温度が上昇することで内部圧力が急激に上昇し、容器が破裂・爆発する |
| 不純物(触媒)による反応促進 | プラント停止中に、鉄錆などの触媒が存在する状態で物質が保持され、意図しない発熱反応が進行して爆発が生じる | |
| 操作・管理上の要因 | 緊急停止時の対応ミス | 冷却速度を上げようとして安全制御システムを解除した結果、攪拌用の窒素供給が停止し、局所的な温度上昇を招く |
| バルブ操作や施錠の不備 | メンテナンス時の仕切板の抜き取りミスや、スイッチへの意図しない接触により、可燃性物質が漏えい・引火する | |
| 物理的現象 | 沸騰液膨張蒸気爆発(BLEVE) | 火災が発生したタンク内の液化ガスが急激に蒸発し破壊されたときに、内部の液体ガスが噴出して巨大なファイアーボール(火球)を形成する現象 |
| 蒸気雲爆発(UVCE) | 漏えいした可燃性物質が直ちに着火せず、大気中で雲のように拡散した後に、離れた火源で着火して爆発する現象 | |
| 外的・構造的要因 | 大規模地震による損壊 | 地震によりタンクの筋交いが破断して倒壊したり、配管が破断したりすることで、可燃性物質が大量に漏えい・着火する |
| 浮き屋根・浮き蓋の異常 | 浮き屋根の沈降や浮き蓋のアルミ製デッキの損傷により、本来閉じ込められているはずの可燃性蒸気が露出し、周辺に爆発混合気が形成される |
総務省消防庁「自衛防災組織等の防災活動の手引き(令和6年8月一部改訂)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
表10に示した爆発の一因となる原因や現象を未然に防止するためには、「監視・検知」、「設備保全・修理」、「運用・操作管理」、「漏えい・引火防止」、「燃焼要素の排除」を徹底し、多角的に講じることが不可欠とされています。さらに、これらを平時から確実に実施することが、危機的状況に陥った場合の迅速かつ的確な初動対応や、発災後の被害拡大防止につながります。
- <爆発事故の未然防止対策>
-
- 監視・検知とは、微細な異変を「早期覚知」し、大規模な漏えいや爆発に至る前に発見することです。
- 五感を活用したパトロール(異音、臭気、配管の変色、霜・もやの確認)
- ガス監視カメラ(赤外線)・検知器による広範囲の監視 など
- 設備保全・修理は、設備の物理的な健全性を維持し、劣化による漏えいを防ぐために必要です。
- タンク屋根の腐食開孔や、浮き蓋シール部の劣化の早期改修
- 防油堤のひび割れを不乾性パテなどで補修し、漏えい時の拡散防止機能を保つ など
- 運用・操作管理とは、緊急停止時のヒューマンエラーを排除し、二次的影響を見極めて異常反応の連鎖を断つことです。
- 安全制御システムを安易に解除・バイパスせず、マニュアルに従い厳格に運用する
- 分散型制御システムによる傾向監視で、目標値からの逸脱を早期に察知する
- 漏えい・引火防止とは、漏えい発生時にその物質の供給を遮断し、周囲の着火源を徹底的に排除することです。
- 装置の緊急停止とバルブ閉鎖による配管の縁切りの徹底
- 周囲の火気使用中止、機器の接地(アース)、帯電防護衣の着用による着火源排除
- 燃焼要素の排除とは、燃焼の3要素の一つである「酸素」を物理的に取り除き、着火条件を満たさないようにすることです。
- 不活性ガスの導入・置換により、容器内の酸素濃度を限界酸素濃度以下に保つ
- 異常時には泡消火薬剤を液面にかぶせて抑え込むことで可燃性ガスの大気への露出を抑制する
- 監視・検知とは、微細な異変を「早期覚知」し、大規模な漏えいや爆発に至る前に発見することです。
交通・インフラ産業による事故
交通・インフラ産業による事故とは、道路・鉄道・海上・航空での事故と、原子力施設や社会の基盤となる施設で発生する事故を指します。これらの事故は、社会や産業の高度化・多様化に伴い発生する事故であり、発災した場合には、日常生活や事業活動に深刻な影響を及ぼします。
表11は、防災基本計画に基づき、交通・インフラ産業において発生する主な事故災害の種類と、それぞれの概要および対応上の特徴を整理したものです。
【表11】交通・インフラ産業による事故災害の種類・概要・特徴
| カテゴリ | 災害の概要 | 各事故災害における対応上の特徴 |
|---|---|---|
| 道路災害 | 道路・トンネル・橋梁などの被災や、道路交通における大規模な事故 | 災害対応や救援活動の基盤となるため、迅速な道路啓開(障害物除去)による緊急通行ルートの確保と、物流機能の早期回復が強く求められる |
| 鉄道災害 | 列車の脱線・衝突など、鉄軌道の車両や施設で発生する大規模な事故 | 非常に多くの旅客・貨物を限られた線路上で運ぶため、迅速な運行停止措置・安全確保・パニック防止を含めた乗客対応と情報提供が重要となる |
| 海上災害 | 船舶の衝突・沈没、それに伴う火災や油・危険物の流出などの大規模な海難 | 陸上から離れた場所で発生することが多く、救助・消火・流出物対応に高度な専門性と機動力が求められる |
| 航空災害 | 航空機の墜落・衝突、空港施設における大規模な事故 | 一度発生すると被害が甚大になりやすく、国内外の関係機関と連携した迅速かつ統合的な対応が求められる |
| 原子力災害 | 原子力事業所などの事故により、基準値を超えた量の放射性物質や放射線が外部へ放出される事態 | 放射線という目に見えないリスクを伴うため、長期的な避難・健康管理・情報公開を含めた極めて専門的かつ継続的な対応が求められる |
中央防災会議「防災基本計画(令和7年7月)」を基にニュートン・コンサルティングが作成
これらの事故災害が発生した場合、自然災害とは異なる特有のリスクが顕在化します。自然災害が物理的な破壊を主因とするのに対し、事故災害では、「調査・検証に伴う事業停滞」、「社会的・法的責任」、「風評による市場の拒絶」といった、事業や社会への影響が長期化・複雑化しやすいリスクを伴います。
1.調査・検証に伴う事業停滞
事故原因の究明や安全性の確認が優先されるため、復旧や事業再開までに長期間を要する点が、事故災害の大きな特徴です。
- 事故原因の究明が完了するまでの、施設・設備の使用停止や事業停止のリスク
- 施設・車両・船舶などの重要な構造図、技術資料などの滅失や基礎地盤状況により、物理的な修理や事故調査・原因究明が著しく困難となるリスク
- 大量かつ広範囲に漂流する軽石・油・危険物などの流出により、航路が閉塞し、船舶の航行が不能となるリスク
2.社会的・法的責任
被害者対応や法令遵守、行政対応など、事業者に求められる責任が多岐にわたり、経営・組織運営への影響は甚大です。
- 安全規制の不遵守に伴う、事業許可の取り消しや使用停止命令などの厳格な行政処分
- 事故発生時の乗客・利用者およびその家族などに対する情報提供、相談窓口設置、支援計画策定などの多大な対応コストやそれに伴う社会的責任
- 被災者の損害賠償請求に対応するための窓口設置や体制整備といった、原因事業者にかかる多大な経営的・組織的負担
- 高線量下や危険物流出現場などの特殊環境下において、従業員の被ばく管理・健康管理体制を構築・維持することに伴う法的責任とコスト負担
- 安全管理体制(安全統括管理者の選任、労働安全衛生マネジメントシステムなど)の構築や、行政による「抜き打ち監査」への対応コストに加え、行政によって土地や資材を一時的に使用・収用される法的リスク
- 復旧事業における石綿(アスベスト)飛散防止、労働災害、職業性疾病の防止など、厳格な安全衛生管理の不備に伴う法的・社会的リスク
- 復旧・復興事業参入に際しての、暴力団などによる不当な介入や行政機関による実態調査の対象となるコンプライアンス上のリスク
3.風評による市場の拒絶
事故の影響は物理的な被害にとどまらず、消費者や市場の評価を通じて、長期的な経済的損失につながる場合があります。
- 原子力災害などに伴う、周辺地域の産品(農林水産業・地場産業)に生じる市場価格の下落や流通の停滞(風評被害)
- 日本産食品に対する諸外国・地域による輸入規制の強化に伴う、国際的な市場競争力の喪失と輸出停止
- 政府などの指示に基づく飲食物の摂取制限および出荷制限に伴う、特定の供給網(サプライチェーン)の完全な断絶
- 過去の行政処分歴や重大事故情報の公表による、企業のブランド価値や社会的信用の失墜
- 事故に関連したインターネット上での「偽情報・誤情報の拡散」によって生じる実態以上の信用失墜や社会的混乱
このように、交通・インフラ産業における事故災害は、物理的な被害にとどまらず、事業の長期停止や社会的信頼の低下を招くおそれがあるため、事業継続や社会的責任を含めた包括的なリスクマネジメントが不可欠です。
特殊災害
特殊災害とは、「核・生物・化学」物質に起因するNBC災害と、これに「放射性物質・爆発物」を加えたCBRNE災害を総称した災害です。テロや人為的に引き起こされた事故を契機として発生する点が特徴で、被害範囲は事象によって大きく異なります。また、救援者自身が二次災害に巻き込まれるおそれが高いとされています。そのため、通常の自然災害や事故災害とは異なり、専門的で高度な対応が求められる災害として位置付けられています。
NBC災害に含まれる、核(Nuclear)・生物(Biological)・化学(Chemical)の3つの物質によるテロや事故としては、主に以下の事象が該当します。
- 原子力施設での臨界事故や核物質の輸送中に発生する火災・漏えい、またはそれらを意図的に引き起こす災害
- 感染症病原体を扱う研究施設などでの漏えい、炭疽菌などの生物剤を用いたテロ災害
- 毒物・劇物を扱う施設や輸送中に発生する事故、有毒ガスやサリンなどを用いたテロや事故
CBRNE災害は、これらに放射性物質(Radiological)・爆発物(Explosive)を加えたものです。このうち、放射性物質は、必ずしも核兵器に使用される核物質そのものではなく、放射性物質の放出やそれによる汚染被害を伴う危険性から、核物質とは区別して整理されています。特殊災害は、災害の発生形態ではなく、関与する物質や手段によって分類されます。表12は、NBC災害・CBRNE災害に該当する主な物質や手段を、特徴と影響の観点から整理したものです。
【表12】NBC災害・CBRNE災害に該当する主な物質・兵器の一覧
| 物質・兵器分類 | 特徴 | 影響 | 主な物質・兵器 |
|---|---|---|---|
| 核物質(N) | 核分裂・核融合反応を利用するもの。大規模な破壊、熱・衝撃波が瞬間的に発生する | 爆風や熱線による甚大な破壊に加え、放射性物質による広範囲かつ長期的な環境汚染 | 核兵器など |
| 生物(B) | 細菌・ウイルス・毒素などを用い、人や動植物に感染させる。潜伏期間があるため、発症するまでテロの認知が遅れることが最大の特徴 | 感染拡大による多数の健康被害、社会不安や医療体制への大きな負荷 | 炭疽菌、ペスト菌、痘そうウイルス(天然痘)、エボラ出血熱などのウイルス性出血熱、食品関連感染症病原体、新興感染症病原体など |
| 化学(C) | 合成化学物質を用いて、吸入・皮膚接触・経口などにより人体に急速に作用する | 神経障害、呼吸障害、皮膚障害などの急性症状を引き起こす | 神経剤(サリン、VXなど)、びらん剤(マスタード、ルイサイトなど)、窒息剤(ホスゲン、塩素)、血液剤(シアン化水素)など |
| 放射性物質(R) | 放射線を放出する物質が拡散される。目に見えないため、放射線測定器や個人警報線量計による検知が必要となる | 被ばくによる健康被害、爆発を伴う場合は、爆発そのものによる被害と長期間にわたる放射能汚染が生じる | ウラン、ラジウム、放射性物質を用いた爆発物(ダーティーボム)など |
| 爆発物(E) | 爆薬などを用い、爆風・熱・破片による被害を生じさせる。化学・生物剤の散布手段として使われることもある | 爆風や熱による外傷、建物の損壊・火災の発生により短時間で多数の死傷者を出し、建物や都市機能に大きな被害を与える | 爆弾、即席爆発装置(IED)など |
総務省消防庁「化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアル」、外務省「CBRNテロ対策Q&A」を基に、ニュートン・コンサルティングが作成
日本においても、これらの物質や手段が用いられた特殊災害は過去に発生しています。1974年の三菱重工爆破事件、1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件などはその代表例です。特に地下鉄サリン事件では、朝の通勤時間帯の地下鉄車両内でサリンが散布され、約5,000人が負傷し、12人が死亡するなど、都市機能と市民生活に甚大な影響を及ぼしました。
こうした事態を受け、このような特殊災害への対応には、一般的な防災対応とは異なる体制の構築が重要視されるようになりました。政府をはじめ、消防や警察、行政・医療機関、さらには交通・インフラ事業者などの民間事業者も含め、官民が一体となって的確かつ迅速に対応できる連携体制です。その結果、2004年9月17日に「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」が施行され、政府はこれに基づく「国民の保護に関する計画(国民保護計画)」を策定しました。これにより、国だけでなく、指定行政機関、都道府県、市町村、指定公共機関、指定地方公共機関が、それぞれの役割に応じた計画を策定し、統一的な指揮系統の下で対応できる枠組みを整備しています。
さらに、国民保護計画では、武力攻撃やテロなどの特殊災害が発生した場合、国民や関係機関に対して迅速かつ確実に情報を伝達する手段として、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発信されます。Jアラートは、ミサイル攻撃や大規模テロなど、国民の生命に重大な影響を及ぼすおそれがある事態に際し、住民や事業者に対して即時に警報の発表や注意喚起を行うための仕組みです。
特殊災害の多くは、発生直後に正確な状況把握が困難であり、誤った情報や自己判断による行動が被害を拡大させるおそれがあります。そのため、Jアラートなど公的機関が発信する情報を最優先で確認し、それに基づいて行動することが基本原則とされています。
企業や組織においても、特殊災害発生時には独自判断での対応を最小限にとどめ、Jアラートをはじめとする公的情報を基点として、従業員の安全確保や事業継続に関する判断を行うことが求められます。そのため、平時から「どの情報を受信し、どの指示に従うのか」を整理することが、特殊災害への備えとして重要です。
参考情報
- e-GOV「 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号) 」
- 内閣府「 企業の事業継続計画策定・運用促進に向けたメッセージ 」
- 中央防災会議「 防災基本計画(令和7年7月) 」
- 気象庁「 気象災害に関する用語 」
- 気象庁「 過去の地震津波災害 (~1995) 」
- 気象庁「 日本付近で発生した主な被害地震(1996~) 」
- 国土交通省「 治水地形分類図の内容 」
- 警察庁「 第1節 被害状況及び警察の体制 」
- 気象庁「 予報用語 」
- 気象庁「 台風の上陸数(2024年までの確定値と2025年の速報値) 」
- 気象庁「 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化 」
- 国土交通省「 水害レポート2024 」
- 国土交通省「 令和5年版 日本の水資源の現況について 」
- 環境省「 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル(2023年) 」
- e-GOV「 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号) 」
- 国土交通省「 過去の災害対応(平成16年~令和7年) 」
- 国土交通省「 平成30年 全国の土砂災害発生状況 」
- 国土交通省「 令和6年の土砂災害 」
- 気象庁「 火山災害の種類 」
- 気象庁「 噴火警戒レベルの説明 」
- 気象庁「 各火山のリーフレット 」
- 気象庁「 平成18年豪雪 平成17年(2005年)12月~平成18年(2006年)3月 」
- 国土交通省「 1月22日からの大雪等に係る被害状況等について 」
- 気象庁「 大雪について 」
- 首相官邸「 雪害では、どのような災害が起こるのか 」
- 内閣府「 ≪参考資料≫災害救助法適用実績(平成7年度~令和6年度) 」
- 総務省消防庁「 令和6年版 消防白書 資料編 」
- 気象庁「 林野火災予防のための新たな取組を開始します 」
- 三菱マテリアル株式会社「 四日市工場爆発火災事故に関する 事故調査委員会最終報告について 」
- 総務省消防庁「 新日鐵住金(株)名古屋製鐵所爆発火災 」
- 総務省消防庁「 自衛防災組織等の防災活動の手引き(令和6年8月一部改訂) 」
- 総務省消防庁「 化学災害又は生物災害時における消防機関が行う活動マニュアル 」
- 外務省「 CBRNテロ対策Q&A 」